大判例

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広島高等裁判所 昭和30年(う)370号 判決

麻薬取締法は麻薬の取扱を規制するため麻薬取扱者の制度を定め、これら以外の者の取扱を禁止すると共に麻薬取扱者に対してはその取扱の実態を明らかにするため取扱数量その他の事項の記帳又は届出義務を課し、以て麻薬の不正取引、不正使用、亡失その他の事故の防止を図つているのである。そして同法第三九条は麻薬管理者としての記帳義務を、同第四一条は麻薬施用者としての記帳義務をそれぞれ定めているのであるが、麻薬管理者にあつては当該診療施設において麻薬施用者が施用し又は施用のため交付した麻薬その他全体の麻薬についての受払状況を、又麻薬施用者にあつては当該診療施設における個々の診療に当つての麻薬の使用状況をそれぞれ明確ならしめる趣旨を以て各その記載事項が定められているのであつて、即ち右両者は別個の観点からその記載事項が規定せられ、且つその記録も別個のものとして要請されているのである。従つて麻薬管理者に関する右第三九条第一項第三号の「当該麻薬診療施設で施用した麻薬」の中には、当該診療施設に属する麻薬施用者が施用したものは勿論これらの者が施用のため交付したものをも当然包含する趣旨であると解すべく、所論のように「施用のため交付した」との文言が特にないからといつてこれを除外する法意であると解することはできない。けだし若しそうでないとすれば、右両者の間にたちまち数量の不符合を来たし前記記帳の趣旨を全然没却するに至るであろうことは明らかであるからである。

のみならず、本件は当公判廷における被告人の供述によるも、判示麻薬はいずれも被告人が患者に施用したものばかりであつて、施用のため交付したものは存しないことが認め得られるから、論旨は到底採用することはできない。

(裁判長判事 柴原八一 判事 尾坂貞治 判事 池田章)

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